のむけはえぐすり 第90弾 ジャーディン・マセソン商会 その67 Maggie Keswick2008年05月30日 19時46分56秒

Maggie's  CentreのホームページのMaggie Keswickさんの銅像

のむけはえぐすり 第90弾 ジャーディン・マセソン商会 その67 Maggie Keswick

 

”The thistle and the jade”の著者、Maggieさんの家系図を紐解いてみる。    

Maggieさんの曾祖父のWilliam Keswickさんは、ジャーディン・マセソン商会を建て直し、1877年1月には経営危機に陥っていた香港上海銀行に取締役として招かれた。

 

そのWilliamさんは二度結婚をしている。最初の奥さんとの子供がHenry Keswickさんで、Henryさんはジャーディン・マセソン商会のニューヨーク支店で2年間修行してから、1895年に香港にやって来て、1906年から1924年まで大班を務めた。1922年のKing George Vの戴冠式に出席して戻るときには、自分のヨット、カティー・サーク号で香港入りしたというちょっと豪華で、お洒落な人物だ。

 

Henryさんには、David、William、Johnという3人の息子がいる。Johnさんの一人娘が、Maggie Keswickさんというわけだ。  

Maggieさんの叔父さんにあたるWilliamさんは、Mary Lindleyさんと結婚した。二人の間には、おじいさんと同じ名前のHenryの他に、ChippendaleとSimonという息子がいる。親子3代の中に、WilliamとHenryという親子関係がダブって存在するので、時折、文献で混乱が起きていることが、今回、”The thistle and the jade”のJardine Familyの家系図を見てよく分かった。

 

Mary夫人の妹は、York家のPhilipさんに嫁いでいる。York家は”British Monarch Family Tree”に入るEnglandでも名門中の名門である。こういうお家柄の人達の婚約の話というのは、いつ頃決まるのだろう。生まれて間もなくとか、かなり早いうちという噂も聞く。そうであるならば、初代のWilliam Keswickさんが亡くなったのが1912年だから、Keswick夫妻が何かのパーティーに出ていたときに、奥様同士でこんな話があったかもしれない。    

「私の孫に1903年に生まれたWilliamというのがおりますノヨ、どなたか、いいお嬢様がいないかしら、ホホホ」  「それなら、LindleyさんのMaryお嬢さんはどうかしら。妹のSarahさんの方は宅の主人の弟、John Yorkさんのお孫さんと結婚が決まっていますノヨ。この話がまとまって、実家のロスチャイルド銀行とお宅の香港上海銀行が親戚同士になんてことになれば、一石二鳥ジャアございませんコト、ホホホホ」

 

話はまとまった結果、私たちだと遠い親戚という一言で終わりだが、由緒あるお家柄の人にとっては、「Maggieさんの叔父さんの奥さんの妹さんのご主人のおじいちゃんの兄弟」には、あのロンドンの金融王Nathan Rothschildさんの孫娘と結婚したElliot Yorkさんがいるし、Richard Wellesleyさんの兄弟の孫娘と結婚したCharles Yorkさんもいるということになった。Richard Wellesleyさんというのはベンガル総督だった人だが、その兄弟のArthurさんというのはインドでの軍功によってワーテルローの戦いの総司令官となり、ナポレオンに勝利したあのウェリントン公爵のことで、首相にもなった人である。

 

Maggieさん本人は、1941年にスコットランドで生まれている。幼い頃にダンフリースシャーや香港や上海で育ち、オックスフォードの英文科を卒業した。建築協会に所属し、そこでご主人のCharles Jencksさんと知り合っている。二人の子供に恵まれ、スコットランドやロンドンなどに住んだ。庭園について講演をしながら世界中を飛び回り、著書には”The Chinese Garden”がある。

 

1988年、Maggieさんに乳癌が見つかった。1993年に再発し数ヶ月の命と診断されたが、エジンバラのWestern General Hospitalで治療を受け、2年近い闘病の末、1995年6月8日に亡くなった。

 

この時の経験から、Maggieさんは同じような末期癌に苦しむ人々のために、ソーシャル・サポート・センターの開設を思い立った。Maggieさんが亡くなってもその意志は受け継がれ、1年後にMaggie's Centreが開設した。その後もMaggie's Centreはスコットランドやイギリスに4カ所開設された。Maggie’s centreは、癌を患う人々の心身をできるかかぎり健康に維持することで、積極的に癌の治療に立ち向かっていけるようにサポートすることを、目的としている。その活動資金はさまざまなイベントを通して、一般からの募金によってまかなわれている。

 

写真は、Maggie's CentreのホームページのMaggie Keswickさんの銅像である。お父様を含めSirの称号を持つきらびやかな親戚に囲まれながらも、貧しさや病気に苦しむ人々に心を痛めていた。その原点は、「アザミと翡翠」。幼い頃に見たスコットランドと中国の、人々の生活風景なのだろう。

参考文献 1)Maggie Keswick:The thistle and the jade 前出 2)広瀬隆:赤い楯 ロスチャイルドの謎(上) 前出