のむけはえぐすり 第73弾 閑話休題 お腹が出ていて、何が悪いのサ2007年11月05日 22時33分17秒

のむけはえぐすり 第73弾  閑話休題  お腹が出ていて、何が悪いのサ

のむけはえぐすり 第73弾 閑話休題  お腹が出ていて、何が悪いのサ

以前から、肥満がある人は心筋梗塞になりやすいと報告されていました。また、肥満のある人は高血圧もあり、糖尿病もあり、コレステロールも高い場合が多く、それらが重なると、さらに心筋梗塞のリスクが高くなるという報告もありました。

そのようにいくつかの危険因子が相乗的に動脈硬化を悪化させてしまう病態を、1999年に世界保健機関(WHO)は、メタボリック症候群(以下、メタボ)と呼ぶことにしたのです。

同時に、メタボの診断基準を、肥満、高い中性脂肪、低いコレステロールの中の善玉コレステロール(HDL-C)、高血圧 尿中に微量なアルブミンという蛋白が出ること、高い空腹時血糖だと、明らかにしました。それを受けて、日本では2005年に、アルブミン尿を省いて、腹囲を必須項目に位置づけた診断基準が発表されたのです。  

なぜ、腹囲なのかと言うことには、説明が必要でしょう。

肥満の元は、脂肪です。これまで、脂肪組織は単なる余分な栄養の蓄積場所としか考えられていませんでしたが、最近の研究によって、脂肪組織は生体における最大の内分泌器官でもあることが分かってきました。

脂肪組織から分泌されるさまざまな蛋白はアディポサイトカインと呼ばれ、その中にはインスリンへの感受性を支配する蛋白(アディポネクチン)や、感染が起きた時に白血球を集め細菌をやっつける蛋白(TNF-α)や、血液を固める力を持った蛋白(PAI-1)、血圧をコントロールする蛋白(アンギオテンシノーゲン)などがあります。

過食や運動不足によって生活習慣が悪くなると、脂肪細胞は肥大化します。写真の真ん中には、注意域にある肥満の人の肥大化した脂肪細胞の顕微鏡写真が示されています。右端は危険域にある肥満の人の脂肪細胞で、肥大化した脂肪細胞の間に未熟な小型の脂肪細胞が集まっています(岩本安彦監修:メタボリックシンドローム、S7より)。  

肥大化した脂肪細胞では、アディポネクチンの分泌が少なくなり、インスリンが膵臓から分泌されても期待通りに働かない「インスリン抵抗性」という病態に陥ります。一方、TNF-αやPAI-1は過剰に産生され、血管内皮を破壊し、血管内にプラーグという硬い盛り上がりを作ったり、血管内で勝手に固まって血栓を作ったりして、動脈を狭くします。これが、心筋梗塞や脳梗塞の原因になるのです。  

このインスリン抵抗性が諸悪の根源で、食後に充分なインスリンが働かないことから、食べた後の血糖値が高くなる「食後高血糖」になります。このような人は中性脂肪値も高く、善玉のHDL-コレステロール値が低く、悪玉のLDL-コレステロールに作用して動脈硬化をさらに促進します。  

また、インスリン抵抗性によって、インスリンが増加し、血中に長く存在すると、レニン・アンギオテンシンを刺激して、高血圧になります。レニン・アンギオテンシンという言葉は聞き慣れなくても、「ミカルディス」や「ディオバン」といった高血圧の薬はここをブロックする薬だと聞けば、なるほどと思い当たる人は多いでしょう。

それらのことから、メタボの診断基準を決めるにあたって、インスリン抵抗性の存在が最も重視されました。インスリン抵抗性があるかないか。それを知るために、診断基準の必須項目として、結果の空腹時血糖値で捉えようとしたのがWHOで、原因の脂肪の多さを腹囲で捉えようとしたのが日本だったと言えます。

「体脂肪率」は、今回の脂肪の指標とはなりません。というのは、今の医学界ではエビデンスが重視され、それなりの手続きで、さまざまなバイアス(先入観、偏見)を排除して得られた信頼性のあるデータがある場合にしか、結果として認められないからです。その意味では「3000年の歴史」も、「個人的な感想」も、エビデンスではありません。

ウエスト周囲径も、それはそれで、多くのエビデンスから導き出されたのですが、中には「なんだ、ウエストサイズかよ」と、したり顔の人がいて、女性に甘くないか、外国人はどうだ、他のアジアと比べて違うぞと、鬼の首でも取ったような騒ぎになりました。

そんなことは百も承知で、「2005年までの日本人のエビデンスでは、こうなりますよ」と、以下のように決めたのです。

通常、私たちは肥満かどうかの判断には、体重と身長から算出した肥満度指数 Body Mass Index(BMI)という数値を用います。そこで得られたエビデンスを、今回の肥満のデータと重ねて検証したのです。   

脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があり、メタボには内臓脂肪の方が関係していることが多くの研究によって明らかにされました。内臓脂肪の量は、臍の高さで撮られたCTから算出しました。内臓脂肪が100cm2を越えると、心筋梗塞のイベント発生に差があることが分かりました。それに相当する平均の腹囲が、今回のメタボのウエスト周囲径の診断基準となったのです。それが、殿方では85cm以上、皮下脂肪が主なご婦人では90cm以上だったというわけです。  

これからも新しいエビデンスによって、”ウエストサイズ”の基準値も見直されるかもしれません。大事なことは、これまで医者の所に行かなければ分からなかった生活習慣を改善する目安が、素人にも分かりやすく示されたということです。

だから、「お腹が出ていると悪いのヨ」と、言えるようになったのです。

参考文献

1)岩本安彦、他:メタボリックシンドローム Up to date、日本医師会雑誌、136、特別号(1)、2007

2)加来浩平:やさしい食後高血糖の自己管理、医薬ジャーナル社、2007

3)松澤佑次:肥満症・メタボリックシンドローム 最新診療のコンセンサス、医学の歩み、医歯薬出版、2005

コメント

_ Mr.通風 ― 2007年11月10日 11時06分06秒

こういう分かり易さが先生のいいところ(^_^)
是非番外編ののむけはえぐすりも充実させてください

ですが・・・先生はメタボじゃないの?

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