のむけはえぐすり 第81弾 原善三郎の話 その58 ジャーディン・マセソン商会 南京条約2008年02月04日 20時48分44秒

のむけはえぐすり;南京条約締結式場での全員集合図

のむけはえぐすり 第81弾

原善三郎の話 その58 ジャーディン・マセソン商会 南京条約

  イギリス商人のアヘンが引き渡されると、広東にいたElliotさんとイギリス人たちは解放され、マカオへ退去した。

  引き渡されたアヘンは化学反応によって、3週間ほどで全て処分された。方法は、まず、海岸の波打ち際に穴を掘って水を張る。次に、塩と膨大な量のアヘンを投げ込み、最後に石灰を撒く。その瞬間から、ボコボコと泡立ち、白い煙がモウモウと吹き上がる。黒い水となった残りは海へと流す。遠くから見たその白煙を、アヘンが焼却された煙だと思った人もいたようだ。これで、鳥も魚も中毒にならずにすんだ。

  その頃、香港の尖沙嘴で、一人の中国人が酔ったイギリス水夫に殴り殺される事件が起きた。Elliotさんは、林則徐さんから犯人の引き渡しを要求される。その上、広東に入るイギリス船は今後アヘンを扱わないという誓約書を提出するように、求められる。知らん顔をしていると、マカオから出て行けと言われる。2~3000人いたイギリス人は香港や周辺の海に逃れたが、今度は、食料や水の供給が止められてしまった。

  イギリス国内の世論は沸きたつ。広東にいたイギリス商人はアヘンに関係のない商人で、その身代金のためにアヘンがとられたと思っている。そんなまっとうなイギリス商人は広東にいないということが、本国の人には分からない。

  とうとう、イギリス議会は出兵を決議する。グラッドストーンさんは、最後の反対演説の中で、「イギリスの旗は、パーマストン卿の指導の下に恥ずべき醜汚な貿易保護のために掲げられるようになった」と演説した。開戦に向かって、パーマストンさんがいかに強引だったかということがうかがえる。

  パーマストンさんは貿易監督官のCharles Elliotさんと、CharlesさんのイトコのGeorge Elliot少将を全権大臣に任命した。道光帝は林則徐さんと鄧廷楨さんを総督に任命し、全面対決が始まる。

  清軍は広東の河口であっさり負けてしまい、防備の薄い寧波や天津などの要地が占領され、揚子江や黄河の河口が封鎖された。道光帝は、林則徐さんの悪口の、あることないことを吹き込まれ、林則徐さんを罷免してしまう。代わりに琦善さんを欽差大臣に任命するが、琦善さんは全ての罪を林則徐さんにかぶせ、Elliotさんにアヘンの賠償として600万円や香港の貸借を約束する(川鼻仮条約)。

  間もなく、琦善さんの嘘は道光帝にばれ、琦善さんは拘禁された。一方、Elliotさんの方も、できるだけふんだくれというパーマストンさんの指示に反したことで、パーマストンさんの怒りを買う。

  道光帝にとっても、全てが不可解だった。大臣たちは戦争に勝っていると言う。にもかかわらず、イギリスは強気な要求をしてくる。1841年の年の初めから再び戦闘が激しくなり、戦うたびに清は大敗する。それでも、道光帝には相変わらず連戦連勝の報告ばかりが届けられる。ついに、3月に広東協約が結ばれ、アヘンの代償として600万円(単位は洋銀、「アヘン戦争と香港」:264P)が支払われた。それすらも道光帝には、広東の行商たちがイギリス商人に残した借金の返済だと、報告された。

  1841年5月に、Elliotさんの後任のPottingerさんがマカオに赴任してきた。Pottingerさんは直ちに福建省や浙江省を攻撃し、廈門(アモイ)と舟山島を占領する。

  戦いに敗れた清国は、1842年8月29日、戦艦コーンウェルス号で南京条約を調印した。イギリスは、広東でもらった600万円は「占領するはずだった広東をしないであげた身代金だった」と訳の分からないことを言いだし、アヘンの賠償金として、別途、600万円を請求する。この際、取れるものは取ろうと、二重取りする魂胆だ。

  南京条約によって、清国は多額の賠償金を払っただけでなく、香港をイギリスに割譲し、五つの港を開港し、行商を廃止し、イギリスが自由に貿易をする権利を認めた。     写真は、東洋文庫にあった南京条約締結式場での全員集合図である。テーブルについているのは通訳と清国の長官たちで、その左後ろが、1843年に初代香港総督になるHenry Pottingerさんだ。PottingerさんはアイルランドのBelfastあたりで生まれ、1806年17才の時から東インド会社に勤めた。Jardineさんの5年後輩で、帰国後Victoria女王お気に入りの枢密院議員となった。そしてこの絵の下には、「最も仁慈深い威厳のあるVictoria女王へ」と書かれている。

参考文献

1)矢野仁一:アヘン戦争と香港 中央公庫、中央公論社、1990