のむけはえぐすり 第62弾 原善三郎の話 その41 Aberdeen取材旅行 倉場 ― 2007年08月20日 22時09分34秒
のむけはえぐすり 第62弾 原善三郎の話 その41 Aberdeen取材旅行 倉場
旅の楽しさには、美しい景色を見ることや、おいしい食事を食べることにもあるが、なによりも人と出会うことが一番だ。
スコットランドの第3の都市、Aberdeen(アバディーン)に着いた日の翌日、早速長崎のグラバー邸で知られるグラバーさんの、晩年を過ごした家を訪ねる。パンフレットの表紙が、「倉場」となっている。 グラバー邸の入場券を買おうとすると、案内員のそいつは困った顔をしている。No、Noと言いながら、時計を指さす。11時に開場するので、まだ1時間も早いと言うことらしい。今回の旅行で一番多く使ったI see、I seeを使いながら、やむなく戻ろうとする。
気の毒に思ったのか、そいつが「中に入って、待っていても良いよ」と言うので、中で待たせてもらうことにした。すると、そいつは私に、グラバーさんを知っているかと聞く。
実のところ、私はまだグラバーさんについて何も勉強していない。そこでa littleと答えると、やおら蕩々とグラバーさんの親父の話から始める。
並の英語も良く聞き取れない私に、さらにスコットランド訛が入った厳しい英語で攻めてくる。努めてゆっくり話そうとしてはくれるのだが、時々熱が入ると早口になる。慣れるまでに少し時間がかかったが、内容は私の得意の分野だ。慣れてくると、私の「I see」が目立って少なくなり、相づちがsentenceに変わる。
そいつが長崎のグラバー邸の模型を説明するので、私は新婚旅行で行ったと言うと、Oh reallyとそいつ。キリンビールが置いてあった部屋で、これもグラバーさんが日本で作ったと案内するので、私は会社があった横浜から来たと言うと、またOh reallyとそいつ。
そいつがこの部屋のランプは日本から持ってきたと言うので、私がその時に灯油を運んだシェル石油の創始者のサミュレルさんは会社を横浜から始めたと言うと、今度はOh reallyがない。今のアバディーンは北海油田の基地で、Shell石油の城下町のようになっている。そのお殿様が日本で足軽を始めたというのは、納得がいかないのだろう。
2階の部屋に鎧(よろい)が置いてあり、「贈三菱商事株式会社」と書いてある。そう言えば、グラバーさんは岩崎さんと仲が良かったことを思い出す。そいつはその鎧の兜(かぶと)を持って、重いよと言いながら、私の頭の上に乗せる。確かに重いことは重いが、所詮、装飾用の美術品だ。大したことはないと思っていると、そいつは、日本でも鎧兜を着たことがあるかと、とんでもないことを聞く。
I have never worn a kabuto like this. I have never expected that I wear the kabuto in England before in Japan. と答えると、そいつは意外そうな顔をしながら、満足そうだった。
地下のワインの貯蔵庫に行く。朝のうちはセーターを着込むくらい寒かったが、急激に暑さを取り戻した外気の中で、地下室はひんやりとしていた。奥の部屋は肉や魚を干しておく部屋で、手前のがらんとした小さな部屋がワイン部屋だと言う。
「どこかにワインが残ってない?」と私。 「そんなものがあれば、俺がとっくに飲んじまっているヨ」とそいつ。 「You are sure]と答えたところが、私の英語力の限界。 多分ここは、「I am sure you did」だったかなと、今は反省している。
「花」と書かれた掛け軸がかけられている次の部屋には、客用の漆でできた食器が置かれている。その漆器の蓋は、逆さにするとお盆になる仕掛けだ。お盆の上には、薬味入れが真ん中にあって、5つのお椀が天神様の梅鉢紋のように並べられている。どう見ても、ソバを食べる時のワンセットなのだが、桶の上に盆で、その上に梅鉢だから、よけい訳が分からない。いくら説明しても、どうにもイメージが湧かないらしい。
挙げ句に、そいつは小さなお椀を持って、桶の中に入れ、金魚すくいのようにすくう格好までする。No、Noと今度は私が言い、soy sauceのsoupが中に入っていてと説明しながら、落語の「時そば」のように、箸でつまんでズルズルとすする真似をして見せる。それでも、分からない。後でインターネットで、教えてやることにした。
「ところで、親父、今、何時だい」 「11 o'clock」 「今から、どこを案内してくれるンだい」
「時ソバ」の落ちをもじったつもりの、こんな変な冗談は日本人だって分からない。だから、英語には訳さなかった。 最後に、時間前にも関わらず親切に案内してくれたお礼を言い、一緒に写真を撮るように頼んだ。二人で玄関横の日当たりの良い居間の窓辺に立ち、若い女性の案内員に写真を撮ってもらう。できあがりを見ると、顔がはっきりしない。今度は、入り口に立って窓の方から撮ってもらう。それは上手くいった。 そいつは、「俺たちはしょうがないヨ」と、私の頭を指さす。 私が「I don't know why we are shining」と言うと、案内員が英語でクスクス笑っている。
写真はその時の、上手くいかなかった方の写真である。
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