のむけはえぐすり 第49弾 原善三郎の話 その28 旧三井銀行 (現三井住友銀行)2007年03月25日 23時45分56秒

のむけはえぐすり  第49弾
原善三郎の話  その28  旧三井銀行 (現三井住友銀行)

 写真は、本町通3著目交差点の三井住友銀行で、昭和6年に建てられた旧三井銀行である。ここにも昭和初期に流行した渦巻き模様の柱頭があるイオニア式円柱がある。

 これからの話は、完全なフィクションである。 

 バブルがはじけて10年ほどたったある日。
 さくら銀行と名前を変えた旧三井銀行の会議室では、重役達が、住友銀行との合併に賛成派の重役Aと、反対派の重役Bのやりとりを見守っている。

 重役A 「橋本首相の金融制度改革で、今や金融界全体が再編へと動いています。三和に袖にされたあさひのように、出遅れれば、預金保険機構からの公的資金導入を受け、国有化されてしまうのは目に見えています」
 重役B 「だからといって、三井銀行が、財閥として覇を競った住友の銀行と合併しなければならないとは・・・」
 重役A 「関西に強い住友と、関東に強い三井ということです。プライーベートバンキングの住友とマスリテールの三井が合併するのです。お互い補完しあえるベストな相手と、そこは割り切るべきではないでしょうか」
重役B 「それなら、三菱銀行とはどうだろう?」
 重役A 「三菱銀行は官僚的だといわれていた分、バブルの痛手は少なく、正金銀行を受け継いで海外に強い東京銀行と合併して、すでにメガバンクの道を歩み始めています。打診しましたが、わが行との合併には興味がないようです」
 
 重役B 「だが、住友銀行には、いざとなると融資先には冷たく、容赦がないという評判がある。がめついとか、逃げ足が早いとか、とかく顧客イメージが悪いが・・・」
重役A 「現実的なのです。住友は効率的で、営業経費が少なく、むしろわが行が学ぶべき所が多いと思います」

 重役B 「利益第一主義でやってきた住友銀行のバブルの負債も大きいと聞くが、大丈夫だろうか。わが行も旧太陽神戸銀行の負債は思っていた以上に大きかったが、開けてびっくりと言うことにならないか? 充分調査はしたか」
 今まで黙って聞いていた旧太陽銀行系の重役Cが、遠慮がちに発言する。
 重役C 「それは、旧神戸銀行の負債を引きずったからです。太陽と神戸が持っていた多くの店舗で、新たな顧客の獲得ができていないところにこそ、問題があると考えます」
 重役A 「太陽だ神戸だと、いつまでもかつての出身銀行にこだわっている時期ではありません」
旧神戸系の重役が発言しようとするのを遮るように、さらに重役Aは続ける。
    「それでも世間の目からは、住友による三井の救済と映るでしょう。すでに、わが行は三井グループ各社ばかりでなく、トヨタ自動車にも増資を引き受けていただいています。速やかに現状を打破しなければ、事態は悪化するばかりです」
 
そこに重役Aに一枚のメモが渡される。メモを見た重役Aの顔には、驚きの色が広がる。

 重役A 「ただ今、金融庁のほうから、第一勧銀と富士の合併にゴーサインが出たという情報が入りました」
 重役B 「都銀の名門といわれた富士銀行が、都銀一位の第一勧銀とか・・・。山一証券のツケがそこまで大きかったか・・・」
 重役A 「金融庁の意向が働いたようです。多分、日本興業銀行も背負わされ、一挙に公的資金が投入されるはずです」
 重役B 「となると、最終的な公的資金が入る時期が近いと考えなければならないナ」
 
重役A 「はい。三菱も、不良債権隠しが発覚した三和系を背負わされるようです」
 重役B 「うちも、わかしお銀行だナ。三井と住友が合併したとして、有価証券の含み損を解消できるだろうか?」

 重役A 「三井と住友が組めば、カードローンやインターネットバンキングなどのリテールで首位に立てます。二つの財閥の傘下企業の業績さえ回復すれば、大丈夫です。ゼロ金利もしばらく続きますし、どうせ不良債権も国民の税金でチャラです」
重役B 「それもそうだネ」と、最後は軽い。
 
 2001年にさくら銀行と住友銀行は合併して、三井住友銀行となった。

参考文献
1)岩崎博充:銀行・証券・保険大再編 一目でわかる金融業界、日本実業出版社、2000
2)一条徹:銀行再編物語、新風舎、2004
3)加藤忠:金融再編、文藝春秋、1999