のむけはえぐすり 第4弾 イシモチの話2006年03月06日 20時13分01秒

イシモチの話

 日本のイシモチは身質が柔らかく水っぽいので、焼いては歯ごたえを重視する日本ではあまり歓迎されない。春、今の時期に刺身にしたあっさりとした白身の味を知る人以外には、蒲鉾やすり身の材料ぐらいにしか思っていない人の方が多い。これが韓国や中国では正月や祝い事に出され、鯛よりも貴重な魚として重宝されている。

ファンちゃんも必ず、韓国に行くと買ってくる。それも済州島産のものに限り、ロッテ百貨店など、出所のはっきりしたところでないと買わない。筏のようにわらで結ばれた半干しのチョギ(韓国名)が十匹、十万ウオンから二十万ウオンのかなり高値で売られている。

魚が食べるプランクトンの差なのか、味は明らかに日本のモノは違う。独特の臭みと甘さとこくがある。とにかく美味い。今回の韓国行きの前までは、軽く油を引いたフライペンで焼いていたが、今回ソウルのオモニムからそのまま焼くと美味しいということを伝授され、そのまま焼くようになった。それでもいいイシモチは、皿にうっすらと残る魚本来の油がある。

中型のアジぐらいのものでも、頭から食べる。ただ、気を付けたいのは、イシモチ(石持)の名前の由来となった頭の後ろの方にある平衡を保つための耳石が、白い石を咬んだように歯に当たる。ここはそっとしゃぶって、口から出す。小骨はニシンのように細くたくさんあるが、気にせずに食べ尽くす。

イシモチは他に、グチという名前もある。これはつり上げられたときに、ギーギーと泣くので、グチを言っているように聞こえることからついた名だとされている。また、その声がうるさいというので、英語ではドラムフィッシュと呼ばれている。

イシモチはスズキの仲間でニベ科の魚だが、厳密にはニベとは区別されている。ちなみに、このニベの浮き袋から膠(ニカワ)を作っていた。「にべもない」という言葉は、粘りっ気もないところから、親愛感が無いという意味で使われるようになった。
例えば、こんな風に使う。「韓国クラブの女の子にだまされたとグチったら、だまされたあなたが悪いとニベもなく言われた」