韓国家庭料理のお店　　　　　　　　　　　　　　　　「フライペン」

第１１５弾　　のむけはえぐすり

古代の帰化人　伽耶

日本語と韓国語は同じウラル・アルタイ語族に属し、文法がよく似ている。言語だけではなく、日本の文化の多くは、弥生時代以降、朝鮮半島から渡来して来た帰化人によってもたらされた。

古代に朝鮮半島から集団で帰化した時期が、３回ある。最初は日本書紀の「応神紀」に書かれた４世紀末で、次に雄略天皇と欽明天皇の５世紀末から６世紀初と、天智・天武・持統天皇の７世紀後半である。戦乱や政変や飢餓など、その時々に朝鮮半島から逃避しなければならない理由があったのだろう。

その度に、大和朝廷は海を渡ってきた人々に土地を与え、氏姓制度に組み込み、帰化を積極的に受け入れた。中には大和朝廷で活躍した一族もいるし、地方に住んで特殊な技能を伝えた一族もいる。私たちが想像する以上に多くの帰化人がいて、日本の各地にその足跡を残している。

どのような氏族が、いつの時代に日本にやって来て、何をもたらし、その足跡がどこに残されているのかということが、一番興味のあるところだ。しばらく、帰化人たちがそれまでの政治的、経済的基盤を捨ててまで、日本に移住しなければならなかった朝鮮半島側の事情を調べてみる。

日本列島と一衣帯水の朝鮮半島南部には、３世紀の中頃、弁辰の12カ国があった。その中から、日本海側に慶州を都とした新羅、黄海側に熊津（今の公州）を都とした百済が興り、間の地域には小国が乱立した伽耶（カヤ）があった。

伽耶は任那とも呼ばれ、伽羅・迦羅（カラ）、加洛・駕洛（カラク）とも表記されることがある。伽耶には、金海の亀旨峰（キシフル）に金の卵となって降臨した首露王を初めとした６人の子供が伽耶六国を建国したという伝説がある。この伽耶六国は伽耶の中でも有力な国で、今の金海にあった金官伽耶国、今の咸安の阿羅伽耶（安羅）、今の尚州の古寧伽耶、今の高霊の大伽耶、今の星州の星山伽耶、今の固城の碧珍小伽耶にあたる。写真は私が作成した六伽耶と新羅、百済との位置関係で、国名は「三国遺事」に依った。 　 　

伽耶にはこれ以外の小国がたくさんあったが、伽耶が滅亡するまでひとつの国に統合されることはなかった。そのため、隣国の新羅や百済、あるいはその北部にあった高句麗の侵略をたびたび受けるようになる。倭といわれていた日本にとっても、伽耶は古くから鉄の主要な供給地であったから、伽耶の動静には無関心ではいられない。 　 　

伽耶の歴史は、前期と後期に分けられている。前期は３世紀から５世紀初までで、金官伽耶国と安羅伽耶国が中心となり高句麗と対抗し、やがて高句麗の圧迫を受けて両国が衰退していった時期である。後期は、それにかわって大伽耶と名前を変えた高霊伽耶が伽耶国の盟主となり、百済や新羅と争いながら、結局は新羅に敗れて562年に滅亡するまでの時期である。 　　 　

最初に集団で帰化してきた４世紀末に、朝鮮半島では何があったのだろうか？

日本書紀では「応神紀」に記載されていることが、内容からは百済の近肖古王の時代と重なり、実年代は４世紀末に比定できる。それによると、広開土王が率いる高句麗の侵攻に困り果てた百済と新羅が日本に援軍を請い、王子を人質に送ってきたと書かれている。倭は金官伽耶国を基地として援軍を送り、百済からは367年にわざわざ倭王のためにつくったと銘文が記されている七支刀が贈られてきた。一方、新羅は人質を奪還したり、高句麗にも通じたり、上手く立ち回っていた。

高句麗の広開土王の碑文には、倭の軍隊には安羅の兵隊もいて、400年には高句麗が「任那・加羅」を攻め、404年には帯方郡まで攻め込まれたが撃退したと記されている。戦線が激しく動く攻防の末、倭は敗退し、金官伽耶国と安羅伽耶国は衰えていった。

その頃、金官伽耶国から秦氏の祖である「弓月君」が120県の民を率いて帰化し、安羅伽耶国から東漢（やまとあや）氏の祖の「阿知使主（あちのおみ）」と「都加使主（つがのおみ）」が党類17県を率いて帰化したと、「応神紀」に記載されている。細部の信憑性はともかく、四世紀末にこの二国からの帰化が始まったことを示唆している。

したがって、４世紀末に日本に伽耶から集団で帰化してきた背景には、伽耶諸国が高句麗に圧迫され、それまで伽耶の盟主であった金官伽耶国と安羅伽耶国の衰退があったことが分かった。

参考文献

１）朴天秀：伽耶と倭　韓半島と日本列島の考古学、講談社選書メチエ、2007 ２）平野邦雄：帰化人と古代国家、吉川弘文館、2007